昼過ぎ

置き去りのカート 翌日もそのままだった/屋上から海の様子を眺めた

被災からだいたい2時間が経ち、お昼を過ぎた頃から、お腹を空かせて泣き出す子どもがいました。私たちはこうした子どもたちに、部屋から持ってきたお菓子や、前の日に買い込んでいたランブータンを分け与えたりしました。また逆に、他の国の方々が私たちの子どもへクッキーやバナナを与えてくれたりもしました。

また、はじめは飲み水を確保できるか心配でした。ところが、ホテルの掃除のスタッフが掃除のカートを残したまま逃げてしまっており、皆そのカートから飲料水のボトルを確保しました。そのため誰も飲み水に困る人はいませんでした。

トイレは、避難していた新館の1階を利用しました。給水塔の水が残っていたためでしょう、水が流れました。『また津波がくるかもしれない』とビクビクしながらも利用することができました。

今まで大地震や津波を経験したことのないタイ人にとっては、今回の津波が一体なんだったのか、皆目検討もつかなかったようです。余震が起きるたびに『また津波が来る!』というデマが流れ、何度も人々が逃げ惑いました。屋上でしばらく一緒にいたタイ人の女性から『また大波が来るらしいので今から山に逃げるけれど、一緒に逃げるか?』と誘われました。もし一人身だったら、すぐに彼女のバイクに乗せてもらって逃げたことでしょう。でも子ども二人を連れていくといっても移動手段もないし、山に逃げるのもかえって危険に思えました。夫と話し合い『私たちはここに残る!』と決断しました。

子どもたちはこの"普通でない”状況を察知したのでしょう、いつもいうわがままもほとんどいいません。避難中はお絵かきをしたり、しりとりをしたりして過ごしました。

部屋の交渉

フロントと幾度も交渉を重ねた/ロビー下の花飾り

14時頃になると、何度かデマをやりすごし、避難していた人々も落ち着いてきました。私たちも『あと2泊する部屋を確保しなくちゃ!』と思いました。こんな『いつまた津波がくるかも知れない』状況では、今の海に近い1階の部屋には怖くて泊まることなんてとてもできません。少しでも海から遠く、位置が高い部屋を確保しようと、ホテルのフロントへ交渉に行きました。当然ながらフロントも大混乱で、てんやわんやしていました。『私たちは1階の部屋だが、小さい子どもが二人いるので今夜はとても寝られない。部屋を変えて欲しい!』と交渉しましたが『みんな同じ状況です。それに今夜は満室なので無理です』と断られてしまいました。かなり粘ったけれど、結局は変えてはもらえませんでした。

4階の避難場所へ戻って、しばらくはネットを見て時間を過ごしていました。新たに『アンダマン海沖でマグイチュード 6.1』という記事もあり、先ほどのスマトラ沖は誤報なのかと思っていたら、その後震源地がどんどん北に上がって別な場所を震源に何度も余震があったようでした。

ずっと一緒に過ごしてきた日本人の方の姿が見えなくなり、夕方に再び戻ってきました。彼女は山よりのロイヤルパラダイスホテルに部屋を確保したらしく、そちらへ移るといっていました。彼女は今日の昼ごろホテルをチェックアウトをしようと荷物をまとめていたことろで津波に遭遇してしまったそうです。泊まっていたホテルの部屋は足もとまで浸水したものの、荷物に大きな被害はなかったとのこと。でも今日の飛行機には乗れないので、少しでも海から遠いホテルに部屋を取ったといっていました。ロイヤルパラダイスホテルはパトンでもかなり目立つ高層階のビルディングタイプのホテルで、やはりビーチ沿いのホテルに滞在していて被害を受けたゲストが、続々と部屋を取り始めているようでした。

私もこうしちゃいられない!とまたフロントへ降りて行き、交渉をくりかえしました。なかなか首を縦に振らないフロントのお姉さんに『今日プーケットに来るはずの人が来ていないのだから、どう考えても満室なんてことはあり得ない、もし部屋を変えてくれなければ2泊の予約はキャンセルして別なホテルへ泊まる。もちろん2泊分は返金してもらう』と言ったところで『マネージャーに相談する』とようやく上司に相談してもらえました。すると一発でOK!と部屋のチェンジの要求が通りました。希望通り、3階の部屋へ移動することになりました。

この時で、17時くらいになっていました。4階の踊り場にはもう6時間以上避難している計算になります。子どもたちも疲れた顔をしはじめたので、とりあえず新しい3階の部屋に移動することにしました。3階といっても同じスーペリア棟の3階であり、海からの距離は250メートルくらいしかありません。それに未だに電気も水道も復旧しておらず、エアコンも効かないため、部屋の中はかなり暑くなっていました。でもとりあえず『3階なら大丈夫』と自分に言い聞かせながら、そこへ家族で移動し始めました。

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