津波再来!?

津波の翌日(昼間に撮影したもの)

夕食の後ぶらぶらと歩いてホテルへ向かうと、サワディラックロードのちょうど小学校前くらいのところ(ホテルから100メートルくいらい山側)にバリケードがはられ、そこから海側へ一般の人は入れないようになっていました。バリケードより海側の商店は全て閉店していてあたりは真っ暗です。バリケードのところにはタイ軍の兵士がトラックに乗って警備をしていました。

私たちがバリケードをくぐりホテルへ向かおうとすると、タイ人のカップルが声をかけてきました。『どこへ行くんだい?10時にまた大津波が来ると言っているからここから先へは行かないほうがいいよ』と。時計を見ると時刻は8時30分をまわっていました。『でも私たちはこの先のホテルに泊まっているから、どうしても部屋に戻らなくてはならないんです。』『だったら10時までに逃げた方がいい、自分たちもあと少ししたら山へ逃げようと思っている』と真顔で言うではありませんか。

『その話は本当か?』と、聞くと『さっきラジオでいっていた、津波が10時に来るかもしれない』と。またMaybe(かもしれない)です。夫と顔を見合わせ『とりあえず部屋に戻ろう、それから状況を判断して逃げるかどうか決めよう』と話し、カップルには『10時まであと1時間はあるからとりあえず部屋へ戻る』と話したら彼らも納得し、私たちはその場を離れました。

夕食前は周りが明るくて気がつかなかったのですが、ホテルから先の海方向は本当に真っ暗でゴーストタウンのようになっていました。『立ち入り禁止区域に入り、また津波が来るかもしれない真っ暗なパトンビーチ方向へ向かう』このことは今回の体験の中で最も怖い出来事のうちのひとつでした。暗闇、命の危険、避難先の心配。ホテルのフロントで先ほどの話をすると、『誰がそんなことを言っていたのですか?そんな話は聞いていない』とスタッフが答えました。一体私たちは誰を信用すればよいのでしょうか?それから部屋に戻りテレビをつけてみましたが、10時の津波に関する情報を得ることはできませんでした。

とりあえず、すぐに逃げられるように1泊分の荷物を用意して『いざとなれば他の荷物は部屋においたまま山側のロイヤルパラダイスへ逃げよう』と夫と話しました。

日本人のMさんにもこの話を知らせようと思い、彼らが泊まっている1階の部屋を訪れてみました。『また津波が来るかもしれない。Mさんご一家が逃げられるようだったらウチも一緒に逃げるけれどどうしますか?』。しかしMさんのご主人はきっぱりと『自分たちはもうこの部屋で一夜を過ごそうと決めている。今までこれだけ津波が来ると噂が流れたのに、一度も来ることはなかった。自分は3階にも部屋を確保しているが、その部屋は電気がつかないので1階だがこの部屋で寝ることに決めた。もし自分が4階のゆりさんの部屋に泊まっているなら間違いなく逃げない』とおっしゃったのです。私は彼の話を聞いて、日本人の彼の言うことを信じることにしました。

部屋に戻りMさんの話を夫にして『今夜はこの部屋で過ごそう。ここは4階だから大丈夫、きっと明日の朝を迎えられる』と、この部屋で過ごす覚悟を決めました。時計を見るともうあと少しで10時になろうとしていました。私はテレビのニュースをそして夫はベランダにでて海の様子を眺めていました。運命の10時をしばらく過ぎましたが、満月の月明かりで照らされたホテルの中庭はシーンと静まり返り、10時の津波が来ることはありませんでした。しかし、『絶対に津波が来ない』とは誰もが言えず、『4階のこの部屋は安全』という保障はどこにもありませんした。

Mさんのご主人が昨日、明けがたまで起きて家族を見守った話を夫にして『なるべく遅くまで起きていてね、それからテレビを消さないでね』とお願いし私も1時過ぎまで起きていたのですが、いつの間にか寝てしまいました。夫は結局3時過ぎまで起きてくれていたようです。

<< back  |  next >>


ページの先頭へもどる

Copyright 2002-2005, Yuri all rights reserved.