パイナイ?

サワディラックロードを離れる

12月28日の昼すぎ、私たちは立入禁止区域のパトンビーチをやっと抜け出し空港へ向かうことができました。

パトンのラーユーティトロードは大渋滞しており、車はゆっくりとしか進みません。『もっと早く出発すればよかったかな?』いまさら飛行機に乗り遅れては大変!ちょっと心配になってきました。

ほどなく渋滞を抜け出し10分くらい走ったところで大きなゴルフ場が見えてきました。プーケットに着いた日にホテルへ向かった道とは別な道を通っているようでした。と、突然タクシードライバーがゴルフ場の敷地内の道へ入ってしまい、そのままどんどん奥のほうへ進んで行くではないですか!私の頭の中は???です。何?どこへ行くの?

ドライバーに『パイナイ?(どこへ行くの?)』と聞くと、『パイ サナンビン、マイミーパンハー(空港だよ、心配しないで』と答えました。空港?だってどんどん道は細くなっていくし、明らかに山に向かっているじゃない!こんなところでおいはぎ?子どもたちはどうなるの?後部座席を見ると(私は助手席に座っていた)、夫も青い顔をして子どもたちを抱き寄せていました。

ドライバーが『プーケットのあとはどこへ行くんだい?』と聞くので、私はとっさに『日本へ帰るんです。津波からようやく逃げることができたけれど、子どもたちも怖がっているし日本の両親もとても心配しているから一刻も早く帰らなくてはならないんです。』とこれからシンガポールへ行くことは口にせず、日本に帰らなくてはならないことを訴えました。

夫と日本語で『どうしよう、大丈夫かな?いざとなったら逃げられるな?』と話していると、私たちが疑惑の目を向けていることを感じ取ったドライバーが『空港までの道が渋滞しているといけないから裏道を通っているだけよ』とか『もうすぐ学校も見えてくるから大丈夫』とさかんに私たちをなだめようとしています。でも山道はくねくねまわり、山肌の岩が崩れて赤い土がむき出しになっていました。

『津波からせっかく助かったのにこんなところで命を落とすなんていやだ!せめてこどもだけでも助かって欲しい』そう思ったところで突然大きな道に出て、ドライバーの言う学校も見えてきました。私たちは『フゥゥゥ』と安堵のため息をついてしまいました。ドライバーがニヤニヤしながら『だからいったでしょう、問題ないって』。

ドライバーさん、疑ってしまってごめんなさい。でも私たちは今まで散々怖い目にあってきたので、ちょっとのことでも心臓がバクバクしちゃうんです!とは言わなかったけれど、かなりナーバスになっていたので、最後の最後にまた怖い思いをしてしまいました。

しばらくするとちょっと落ち着いてきたのでドライバーとあれこれ世間話をしました。『日本は寒いからあたたかいプーケットがうらやましい』それを聞いたドライバーが『寒くても日本に帰った方がいい、プーケット アンタライドゥアイ!(プーケットだって危険なんだから)』そう、『暖かくって楽しくておいしいプーケットだったのに、寒くても安全な日本に帰りたい』私にとってプーケットは”アンタライ”な島になってしまったのでした。

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